チームの成長は「組織全体を見る」ことから始まる

「全体を見る」ことでしか見えない本当に知るべきこと

 

「同じ仕組み」では「同じこと」が起こる

 

繰り返される望まない出来事

チームや組織が恐れる「繰り返されるできごと」とは何でしょうか?「プロジェクトの失敗や遅れ」、「優秀なチームリーダー・チームメンバーの離脱(離職等)」、「人材育成プラン(世代交代等)の失敗」などいくつも思い浮かべることができると思います。もちろん発生時の損害が大きいことがわかっているならば、それらのできごとを発生させないための適切な備えをとる必要性も理解されており、また実際にそれらの対策がとられているはずです。

しかし残念なことにそれらの望まないできごとは繰り返され、同様(またはそれ以上)のダメージをチーム・組織全体に与えます。マネージャーやリーダーは直接的なダメージに加え再発を食い止めることができなかった責任としてのダメージも受けることになるかも知れません。

互いに影響を与え合うことを理解する

組織が対策を行っているはずのそれらの望まないできごとはなぜ繰り返されるのでしょう?人と人が力を合わせて成果を上げることを期待する場合は論理的な対応だけでは予期せぬ結果につながることがあります。また、通常効果が期待される対策そのものが特定の発生原因に対して効果が無い場合や、最悪な状態として対策自体が望まないできごとを誘発していることもあります。

「組織」では問題を引き起こす要因がそれぞれ複雑に絡み合っています。個々人が「自分の行動が他者に影響を与えている」ことを自覚できていない場合、すべての対策の効果が期待を大きく下回ることになります。

ルールは形骸化されていませんか?人材育成は本当に効果が見えていますか?悪い見本が広がってしまっていませんか?目指す人材像を提示していますか?組織はどこに向かっていますか?本当にその対策は効果がありますか?..といった問いに不安を感じるのであれば「組織全体」でもう一度問題に向き合うタイミングと言えるでしょう。

 

組織は人でつながっている

問題の本質を見極める

組織が特定の結果を生み出すのには必ず理由があり、その理由や目的を理解することで変化に対応することができます。もし繰り返し何らかの出来事が発生している、または何か大きな流れが観察される場合は何らかの構造がそのできごとや流れを創り出しているということを理解してください。

私たちの目の前で起こる出来事は、そこに関わる組織の要素間の相互作用によって複雑な挙動のパターンから見えたごく一部に過ぎません。その奥にはそのできごとに至るパターンやそのパターンを生み出す構造やメンタルモデル(個人にとっての思考の前提)が潜んでいます。

望まないできごとの発生する反射的な反応(対処)では問題そのものの抑制には効果が無いこと、そしてそれらに備えるには多くのリソースが必要となることから問題の本質を見極めて対応する必要があるのです。

 

課題に対する視点のレベル

問題の重要性は理解していてもそれぞれの立ち位置によって対応は様々です。結果から「なぜそのようなことが起こったのか」という構造が見えていなければ、よかれと思って行った行動にも効果が見られず、裏目に出てしまうことすらあります。

下記の例から考えてみましょう。

【火事対策の例】

アメリカのある市では火事が頻繁に起こっていたために、多くの市民の命と財産が失われていました。

できごとのレベル

問題が起こったときに反応的に対処します。火事が起きたときは、近くにいる人たちや消防士が迅速に消し止めるといった対応です。しかし延焼や損失の拡大を食い止めることはできても火事の発生防止には役立ちません。また、いつ起こるかわからない火事に対して迅速な消化活動を準備するために多くのリソースを必要とします。

パターンのレベル

パターンのレベルでは計画的な対策や適応策が可能になります。火事がどの地域で発生しやすいか、どの時間帯に多いのかといったデータをとり消防署の分署や人員の配置、シフトの組み方などの計画に役立てました。これによりさらに迅速な対応が可能になります。

しかし計画的な対応も様々な不確実性に弱く、発生そのもののパターンを抜本的に変えるものではありません。

構造のレベル

構造のレベルでは対応の質がより戦略的になります。出火の傾向だけではなくその原因を考慮すると出火場所が台所に多いことや、台所の壁や壁紙の材質、スプリンクラーの設置状況が火事を未然に防ぐことがわかりました。耐火特性を持った材質の開発や利用の義務化、スプリンクラーの設置義務や点検のしくみを準備すること、他にも住宅の物理的な構造を制度化することで火事そのものの予防が可能となります。

しかし現実的な問題もありました。対価特性を考慮した建築基準やスプリンクラー設置の義務化が導入されて年月が経ってもなお、多くの住宅では遵守されなかったのです。出火の多い低所得者層の居住地域には賃貸アパートが多く、家賃が上げにくい状態でコストが高くなることを嫌ったオーナーたちは建築規制上の義務を守らなかったのです。

メンタル・モデルのレベル

居住者たちは、「耐火基準の遵守はオーナーたちの責務」と考えました。一方、オーナーたちは経済状況を理由に「規制は不利益の強要であり行政ことが何とかすべき」と考えていました。そもそもオーナーたちは耐火材の導入はコストを増やすものだと思っていました。

しかしそれは昔のことで、現在では耐火材にしてもコストはほとんど変わらないのです。多くのオーナーたちは、昔知った情報が今でも正しいと思い込んでいました。誰もが、「火事が起こるのはほかの誰かの責任である」と考え、正確な情報の取得を行わず、責任の分担への意識が薄かったのです。

そこで市は、関係者の代表を集めて、市の中で火事の発生がどのように推移したか、火事が起こって死者が出た場合、残された家族はどうなるのかについて話し合いました。この話し合いを通じて市民たちは、いかに自分自身が、市で広がる火事をその被害の増加に加担していたかに気づきます。そこから創造的な対応へとシフトしていきました。

話し合いを重ねた結果、「火事のない街づくり」というビジョンが浮かび上がりました。この新しいビジョンでは、未然防止や迅速な消化にはすべての関係者の関与・貢献が必要であり、それぞれの責任の分担が喚起されました。市内の学校で火事に関する教育を行うことで、家庭に必要な知識や行動習慣が広がっていきました。

他責のメンタル・モデルから共同責任分担のメンタル・モデルに変わり、制度上の改革に魂が吹き込まれたのです。

対応の質(視点)はなぜ変わるのか

上記の火事の例のように、関係者たちの視点がどのレベルにあるかによって対応の質は大きく変わります。できごとのレベルで反応してもうまくいかないことが理解できると思いますが、組織における問題ができごとのレベルで対応されることもあることも実感できるのではないでしょうか?

「自分の行動が他者に影響を与えている」ことが学習できなければ、組織全体がこの視点から抜け出すことは難しいでしょう。視点を変える第一歩は、このできごとへ反応する自身のパターンに気づくことです。

立ち止まってパターンを見ることで計画的な対策が打てます。構造を見ることによって、パターンを変える戦略的な対応が可能になります。メンタル・モデルを内省することで「自分たちで未来をつくろう」とする創造的な対応が生まれます。

 

見えてくるものをどう受け止めるか

意識はしても難しい

日々の仕事をこなしていると目の前のできごとに目を奪われがちです。「計画への売り上げに未達である」「プロジェクトが納期に間に合わない」「ライバル社の予期せぬ展開」など結果が出ていない、思わしくないことは「できごと」の典型です。そんなときに私たちの思考は「すぐに何とかしなくては」と解決策を考えようとします。パターンや構造を考えることは悠長なことに思え、軽視しがちです。

スピード感のあるビジネスの世界ではせいぜい今期の1年、四半期であり、月、週、日、あるいは時間単位で考えようとします。しかし高速で走るドライバーの視野が狭くなるよう、急ごうとすればするほど問題の近辺だけに視野をあてがちです。

このように私たちは、スナップショットでものごとを捉え、行動することが習慣化しているのです。

現実を理解する努力

「何が結果に影響を与える要因か」を考え、うまくいかない原因を見出すと、その原因を何とかすることが対策だと考えがちです。例えば「売り上げの予算未達の原因は販売数量の低下である。とりわけ卸の取扱の意欲が低いことにある。ならば、卸に購入のインセンティブを与えよう」とか、「期限に間に合わないのは投下時間が不足しているからだ。ならば、残業で時間を増やそう。そうすれば期限に間に合わせることができる」といった具合です。

このように論理的に解決策を述べるのはプレゼンの見栄えはいいかもしれませんが、経験に裏打ちされた人たちであれば「本当にそうだろうか」「思考が安直ではなかろうか」と感じるでしょう。組織や市場や人は、そして社会はもっと複雑なのです。

複雑な現実を理解するために

思考のしくみを現実に近づける

できごとと関連する主要な要素群がどのようなパターンで変化しているかを観察し、そのパターンをつくる相互作用の構造を捉えることで、スナップショットとしてでなく全体の流れとして理解します。それらはさまざまな要因が相互に作用しあい、ときには循環することにより中長期のパターンを生み出しているのです。また、こうした循環の相互作用には強弱があり、すぐに強く表れるものもあれば、効果の蓄積を待って遅れて強くなるものもあります。

この循環と遅れ(蓄積)を捉えることで単純ではない複雑性が理解しやすくなります。

まとめ

本気で「望まないできごと」を解決しようとしていますか?

世の中はさまざまな人たちの意思(ルールではありません)で成り立っています。その一つのバランスが崩れると、「こうなるはずだ」という結果に変化があります。ルールは作ることではなく遵守されることで効果を発揮しているのです。

「給料を上げれば人材は集まり退職者もでなくなるだろう」「手順書を作成したから作業ミスは無くなるだろう」「人材育成プランを作成したから順調に組織は成長していくだろう」といった期待は、思い描いた通りに物事が運んだときにのみ効果が発揮されます。では組織は人材それぞれにこの不安定な一本道を進むことを期待(強要)することでしか未来を切り開くことができないのでしょうか?

今回の内容はピーター・センゲの「学習する組織」におけるほんの一部、システム思考とメンタル・モデルの部分を組織の繰り返される問題解決や人材育成に当てはめたものです。特に「人」が集団になったときに起こす行動や結果はひとつの例がそのまま当てはまることなど皆無であり、人材育成についても当たり前のように「あの人ではうまくいったのに..」という声が聞かれます。

だからといってすべてを管理することをあきらめ目標だけを掲げても組織が目的を達成することは無いでしょう。全体、大局、構造、根本を把握して本当に意味のある対策を続けることでしか組織が成長することはないのです。

繰り返される「望まないできごと」に本気で取り組むのであれば個人レベルで対応を行っても効果はありません。組織・チームを巻き込んで必要性を理解し意識を合わせ、そして学習することで「自ら考え自ら行動する」集団・組織へと成長することが本気で「望まないできごと」を解決することにつながるのではないでしょうか。

マネージャーやリーダーは自身が成長することと共に、チームメンバーを、組織を成長させる大きな責任があることを忘れないでください。

 

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