人材マネジメントには人事評価者の育成が不可欠

人事評価者が知るべき7つのこと

 

人事評価制度を人材育成に活かすために

評価シート例

働く意欲につなげる評価とは

人事評価制度を構築し経営理念の成就という目標に向かって全員で進みだすということは、皆が同じ目的を共有しそれぞれが持てる力を合わせることを意味しています。そんなとき、違う方向に向かったり進む速度が遅いメンバーがいた場合はどのように対応すべきでしょうか?

リーダー(評価者)にはチームメンバーの変化や能力を把握(評価)して、目標への途中経過を適切に伝えること(フィードバック)や個別の目標を達成するためのサポートが求められます。その繰り返しこそが全体で同じ目標に向かい足並みを揃えることにつながると理解し、そのために評価者(上司)が被評価者に対し一次評価を行う上で知っておくべき大切なことを考えてみましょう。

 

1. 目的を理解する

どうして「評価」を行っているのか

評価者は被評価者からの「なぜあなたに評価されるのですか?」という問いにハッキリと答えを伝えられなければいけません。人材育成のための評価制度を構築している場合におけるその答えは、上司だからでも先輩だからでもなく「組織として経営目標を達成するため」です。

組織が明確な評価基準と公平かつ客観的な目を持つことができれば、評価するという行為は評価者に与えられた(組織として経営目標を達成するための)ひとつの業務です。もちろん被評価者が自己評価を行うことも同義です。そこに恣意的な判断や個人的な感情が入り込む余地はなく、被評価者をしっかりと見ることができるポジションのリーダーが一次評価を実施することは必然と言えるでしょう。「忙しくて評価(一次評価)しているヒマなんてない」という言葉は、評価するということが業務の一環としてとらえられておらず、その目的も理解していない状態と言えます。

何のための「評価」なのか

人材マネジメントの視点から見た場合に、評価結果を次の育成プランにつなげる仕組みが無ければ「人材育成のための人事評価制度」とは言えません。評価することに何の意味も無いのであれば評価制度の運用にも意味は無く、評価者及び被評価者に「やるだけムダ」と思われた瞬間に制度自体が崩壊してしまいます。

しかし業種によっては処遇改善加算の算定要件になっていたり、制度の整備自体が助成金等の要件になることがあります。この場合はなぜそうなっているかの目的をしっかりと意識してください。たとえば処遇改善加算は従業員の処遇を改善するためのものであり、キャリアアップの仕組み作りや職場環境の改善が目的となっています。そのためには「人事評価制度」が必要であるというしっかりとした意識を事業所全体で持つことが継続的な運用の手助けになってくれます。

2. 納得性に重きを置く

「客観的に」は評価しにくい

評価制度として運用するにはルールが必要となります。しかし前述した「公平かつ客観的な目」を持つことは実際にはとても難しいことであり、明確な評価基準を設けることで感情にとらわれない機械的な評価が実現することが約束される訳ではありません。やはり人が評価を決定するかぎりにおいて、「そこに主観が入っていないか」は常に付きまとう問題となります。

この「問題」というのは被評価者が持つ意識であり、「私はあの上司に嫌われているし・・」や「なぜミスの多い同僚の評価が高いの?」というのは人材育成とはかけ離れた人材の定着にも影響します。

しかし評価者が誰でどのような情報に基づいて評価を行っているかをきちんと伝え、適切なフィードバックと本人の自己評価とすり合わせることでその評価結果に納得できれば「問題」は発生しません。客観的な目や評価基準を説明するよりも、なぜそのような評価なのかを本人としっかり話し合い納得してもらうことが何よりも重要です。

納得性は日ごろの積み重ねが大切

人事評価には評価項目(習得技術・目標管理等)と評価期間が定められています。期間を終え結果について面談を行うときに評価者が「あのときこんな状態だったからC査定だ!」と伝えた場合には、被評価者は「なぜその時に言わないのか?」と不信な思いを持つでしょう。フィードバック面談はある一定期間における評価の結果を決定する目的がありますが、期間内の修正課題をまとめて伝える場として利用してはいけません。振り返りとして確認することは必要ですが、評価者としての役割を持つリーダーは常に周りに目を配り、問題点は都度指摘し是正するように伝えましょう。

評価者が不信感を持たれている状態は制度の運用に黄色信号と言えます。「あの人には評価されたくない」と思われたときを立て直しに多くの労力が必要となる赤信号とするのであれば、評価者の振る舞いや意識が評価制度そのものの継続性を左右すると理解できます。

3. 人が人を評価をするときのエラー

無意識に働く気持ちを知る

評価者においては絶対に知っておかなくてはいけない心構えや決まり事があります。以下に記載する表の内容は評価者・考課者研修においてお約束とも言える内容ですが「知らなかった」では済ますことのできない大切なこととしてあらためて確認してみましょう。

ハロー効果 一つ優れた(劣った)項目があると、他の項目も優れて(劣って)いると
評価してしまう
寛大化傾向 評価が甘く実際よりも高い評価点にしてしまう
中心化傾向 無難な「普通」(標準)に評価点にしてしまう
厳格化傾向 評価が厳しく実際よりも低い評価点にしてしまう
対比誤差 定められた評価基準ではなく、自分自身や同僚と比較した評価をしてしまう
論理誤差 ある一つの評価から推論で他の評価に関連付け、具体的な事実を確認せずに
評価してしまう
近接誤差 直近の行動や印象で評価してしまう(期末効果)
逆算化傾向 処遇への反映のために最終評価だけを意識した実態とは合わない評価を
してしまう(メイキング)

これらは「人を見る目」としても活用できます。「あいつは~だから・・」と決めつけず、基準に沿った判断をすることを意識してください。

評価期間を意識する

評価にはいつからいつまでといった対象期間が定められています。一度大きな成果を上げた人物が常に「デキる人材」として扱われ続けたり、ひとつのミスでいつまでも「あいつは使えない」といったレッテルが貼られることが無いように期間内の成果をしっかりと見てください。

また、目標管理制度(MBO)を取り入れている場合は対象期間における個別の目標が設定されています。このような場合は常にその時の期間目標に対しての成果を評価することになり、前回と同じ行動が評価につながることはありません。

人が人を評価するときには「無意識な気持ち」が働くことを知っておいてください。

4. 管理者の目線を合わせる

それ、あなたの感想ですよね?

それぞれの部署やチームにおける評価者は組織(会社)の考え方や価値観を統一しておく必要があります。そのためには評価基準を理解することが求められ、各リーダーが同じ評価結果となる状況を準備しなくてはいけません。これらがうまく機能しないと「あのリーダーに評価されたい(甘い基準)」「ウチのリーダーは厳しい(辛めの評価)」という風潮が組織に生まれ、公平という目線が失われ納得のいく評価結果を伝えられなくなっています。

特に一次評価を複数人で行う場合は、全員の平均点を一次評価の評点とすることは避け、必ずそれぞれの根拠を持った話し合いを経て評価者全員で納得のいく結果を出すようにしてください。その評点を持ってフィードバックを行い、被評価者が納得する評価結果へとつなげることが大切です。あくまでも一次評価は組織としての評価結果であることを意識し評価者によって評点が変わることがあってはいけません。

チームリーダーはチームメンバーの仕事ができなくてはダメ?

今回の「評価者が知るべきこと」からは少し離れますが、「もし上司が技術的な能力を持っていると従業員にどのような影響があるか」について調査を行った研究チームがあります。

Boss Competence and Worker Well-Being 【ResearchGate:上司の能力と従業員の職場満足度について】

簡単にまとめますと、高い専門的知識を持つ上司にリードされるチームメンバーは、専門的知識を持たない上司に比べて職場満足度がはるかに高いということが判明しました。リーダーに求められることとして「マネジメント能力」や「チームメンバーをよく観察する力」などが良く言われますが、加えて「専門的な知識」も重要であるということを示しています。

このことからやはり技術指導やフィードバック面談においては専門的な知識を持つリーダーからの評価のほうが受け入れられやすいと言えます。これは「納得のいく評価のために」と考えるよりも、「誰をリーダーにするべきか」を軸に考えるべき内容として理解しておくべきでしょう。

5. 育成へつなげる面談

面談は一方的に評価結果を伝える場ではない

面談は本人の自己評価と一次評価をすり合わせ、達成度の確認や未達の項目などを確認し次の育成プランを一緒に作成するために行うものです。もちろん被評価者もこの面談において伝えたいことや確認したいことが多くある場合もあります。お互いにこの面談を次のステップに活かす大切な場として理解し、納得のいく最終評点を決定する場にすることに努めなくてはいけません。

評価スケジュールが年間2回(上期・下期の各半年)の場合この面談も年に2回となり、この時のためにそれぞれが努力していると考えるとその重要性が理解できると思います。フィードバック面談(育成面談)にはやり方がいくつかありますが、評価者は聞き役として被評価者の思い(成果の上がった行動やうまくいかなかったこと、不安や心配事など)を受け止め、解決のためのプランと進むべき目標を再確認し、次期評価期間において「具体的に何をどうしていくか」をしっかりと伝えることができるようなしっかりとした準備が大切です。

達成感を求めて

何のために働くのかという命題をよく聞きますが、生活のため・家族のためといった答えの他に仕事への責任感や目標の達成感があげられることがあり、このために力を注ぐことは何らおかしなことではありません。しっかりとした根拠のあるフィードバックは納得と次の行動のための責任感を生み、正当な評価は実行へのエネルギーになります。大切なことは被評価者と真剣に面談を行い、全員で組織の向上と経営理念の成就を目指すことを確認し、未来に向かった話し合いの場とすることです。

直接お客さまと触れ合う機会の無い(少ない)ポジションで業務を実施している場合などは、営業などのサービスを利用する人と直接話をすることができるメンバーが「顧客の声」を届ける機会を設けることで成長を実感させることも大切です。

価値ある人材として言葉をかける

前述したように、評価者が被評価者に対して「評価する」という行為を行っているのは「組織として経営目標を達成するため」に必要な確認業務であるからであり、被評価者よりも「能力がすぐれている」からでも「立場が上である」からでもありません。チームメンバーが期待された目標を達成することは、同じ目標に向かい一緒に進んでいく仲間として「よくやった」という言葉ではなく「ありがとう」や「助かったよ」という感謝の言葉で表現することで、被評価者はチーム(組織)への貢献と成長を感じることができるでしょう。

6. 量より質で物事を見る

次につながる行動を評価する

営業が大きな物件を受注することができれば成果として評価することになるでしょう。しかしこれは具体的な数値目標の達成という評価項目においての話であり、次回の評価スケジュールでも同じ結果が出るかは不確実です。

このように数値目標のみに重きを置いた場合は評価結果も運やまぐれの要素に左右されてしまいます。それよりもその結果につながった「質」を評価して、業務遂行のレベルそのものを上げることで次も同様のレベルを維持することができるようになることをきちんと評価することが大切です。

また、再現性のある「質」の高い行動には、次期評価スケジュールにおいて全体で意識的に実行すべきお手本ともいえる行動が見つかるかも知れません。そのような組織全体を向上させるような行動も評価することが、継続的な組織の成長につながる大切な目線です。

人間性をしっかり見る

技術の向上にあわせて人間的な成長も必要です。同僚や同期は良き仲間・ライバルになりますが、短期的な成果をあげようと焦るとそこに人間性が色濃く見えてきます。営業成績が未達の場合に同僚の足を引っ張る行為を行ったり手柄を横取りする行為をしたり、またチームの士気を下げようとする発言を繰り返すような行為が確認された場合は評価結果に影響があることをはじめからルールにしておくことも必要となります。

人間性は学習する機会が無ければ成長に個人差が大きく、年齢や経験によって磨かれると期待するには少し不確実であると言わざるを得ません。余裕があれば人間学を学ぶ機会を設けることが一番ですが、卑怯な行為からの成果は評価につながらないことをハッキリさせておきましょう。

この人間性は組織においてとても大切なことで、誰か一人の「悪い行為」はあっという間に伝染し、全体が行う「悪くない行為」に塗り替えられてしまいます。こうなった悪しきルールはもとに戻すにはそのルールに染まったチーム全体を入れ替える必要があるほどに深刻な問題に発展することを理解しておいてください。

7. 人事評価に本気で取り組む

その評価が組織を左右する

最後の項目は一番大切で基本にもなる「心構え」と言っても良いでしょう。評価者の目が被評価者における次の育成プランに影響し、そのプランが人事戦略に影響し、その戦略が人材の補強につながっていくという流れが見えてくるでしょうか。それは組織全体が目標とする経営理念の成就への短期的な目標に現れ、経営戦略そのものにつながっています。また評価結果は賃金査定にもつながり、被評価者の生活やキャリアパスにも直結しています。

もし納得のいかない評価により離職者が出たら、またステップアップに技術や気持ちが追い付かずに不安になってしまったらという思いが残るのであれば、面談がうまくいかなかったのではないでしょうか?それぞれが納得いかない状態で面談を終えることはせず、時間内に次の目的が一致しないのであれば再度時間を取って面談参加者全員で納得のいく総評と次の育成プランへつなげてください。

組織を左右する評価を行う評価者も組織と共に成長します。評価者研修を受講したとしてもはじめからうまくできる評価者はいないでしょう。責任のある重要なことを決定していることを忘れずに、しかし自分も組織の一員として成長する意識を持ち、「何のために」この評価を行っているかという立ち位置を見失わずにいてください。

その先に見えてくるもの

もう一度、被評価者に「なぜあなたに評価されるのですか?」と聞かれたときに答えることはできますか?評価者はセクションやチームのリーダーであることが多く一番近くで被評価者を見ていると思います。評価をするという行為はそのチームをまとめていく中で必要なことでありリーダーの仕事のひとつに過ぎません。評価者が被評価者よりも偉い訳でも昇進のカギを握っているわけでもないのです。

チームとして「人を使う」ということは、リーダーがチームメンバーにやることを指示することだと思っているのであれば、評価者研修の前にリーダー(管理者)研修において組織として成果をあげるということについて理解が必要です。リーダーは特定の目的をチームで達成することが期待され、そのためにメンバーを成長させることが求められるのです。

リーダー不在で評価項目や期間を持たずに日々の業務をこなしているのであればそこに個人や組織の成長を感じることは難しいでしょう。経験や技術が身につくにつれ「日々同じことの繰り返しだな」や「この会社にあと5年居たら自分はどうなっているのだろう?」ということが頭をよぎるでしょう。評価制度は~年後の自分がどうなっているかを理解し、その先にある未来を描くために必要な制度なのです。

 

まとめ

評価は神の行為でもなんでもない

人事評価制度を運用するにあたり大きな壁がいくつかあります。まずは評価制度の構築であり、運用の継続にも大きな負荷がかかります。その中で一次評価を行うリーダーや管理者からの「そんな時間は無い」や「人を評価するなんて嫌われそうでできない」といった言葉が良く聞かれます。評価者は被評価者を一番近くで見ている管理者が選出されることが多いため、いきなりの評価で右も左もわからない場合はその行為自体をとても難しく感じるでしょう。

その「評価をすることは難しい」という感覚があれば、上記の7つの項目を意識することで評価者を納得させ次のステップに活かす「人材育成のための評価」を実施することができるでしょう。立場や経験年数のみで主観による自身のために評価を実施するリーダーよりも間違いなく「慕われる評価者(リーダー)」になり得ます。

一次評価とは「そのときに適切なポジションにいる管理者が行う組織を向上させるための業務」として理解することで少しでも肩の力が抜けるかも知れません。

チームワークが大切

評価という行為には一見上下関係がありそうですが、実際はチームワークが欠かせない日々の業務のまとめでしかありません。経過や結果を報告する仕組みが無い、具体的な成果があいまい、期限が定められていない、何を目標としているのかわからないといった場合は正しい評価することは不可能と言えるでしょう。チーム内の風通しが悪く信頼関係が無ければ評価もまた正しいものにはならないのです。

評価者はチームメンバーと円滑なコミュニケーションを取ることを意識するだけで、評価すべき時が来ても何も焦ることは無くなります。そこにはメンバーとの信頼関係と、その時々の経過や結果の記録があるはずです。評価制度が運用されているということは評価シートと評価基準が明確になっているので、それらを照らし合わせて一次評価を実施し、評価者との面談に備えるだけです。

やっぱり「最後は人」で決まる

「あなたには評価されたくない」という状態は改善に大きな労力が必要になります。そんな状態にならないようにするためには、評価者 ~ 被評価者 の間にある信頼関係がとても大切です。評価すべきポジションにいる人材がすべて人格者であれば言うことはありませんが、実際には経験や技術のみでそのポストにいる場合も多くあるでしょう。

評価者が被評価者を評価するように、被評価者が評価者を評価していることを忘れてはいけません。「評価」という行為は評価者そのものを映し出す鏡であり、曇った鏡では組織としての成長どころか「あなたのような評価者の下では私の未来はない」と判断されることもあります。

目的と責任を持った評価をすることで組織としての成長につなげ、最終目標とも言える「経営理念の成就」を達成できるような「人材育成のための人事評価」を実現してください。

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