介護職員処遇改善加算のポイントは人事評価
介護職員処遇改善加算の改定で変わる人事評価
このたび平成29年度に介護報酬が改定されて、介護職員処遇改善加算が拡充することになりました。
改正された部分と介護事業者が注意すべきこと
加算区分が新たに拡充されました
従来は加算区分Ⅰ~Ⅳでしたが加算が高い新しい区分が1つ加わって、全部で5区分になりました。

新しく設けられた加算Ⅰを算定する要件は以下の3つ
新設された加算区分Ⅰには、次にあげる3つの中からいずれかを設ける必要があります。
1 |
「経験年数」や「勤続年数」等に応じて昇給する仕組みを設ける |
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2 |
「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みを設ける |
3 |
「実技試験」や「人事評価」等の結果に基づいて昇給する仕組み設ける |
新しい加算区分Ⅰを算定する場合に注意すべきこと
新設された加算区分Ⅰを算定するポイントは「昇給」
キャリアパス要件IIIとは経験・資格・評価のいずれかに基づいた昇給の仕組みのこと
平成29年度介護職員処遇改善加算の改定における最大のポイントは「昇給」にあります。これまでのキャリアパス要件Iでは、職位・職責・職務内容に応じた要件と賃金の体系を要件としていましたが、昇給に関する規定は不要でした。しかし、キャリアパス要件IIIでは、昇給をするための基準として、経験・資格・評価のいずれかに基づいた仕組みが必要とされます。
いずれの3つの仕組みにおいても、ポイントとなるのは人事評価になります。当然ながら、昇給を行うには適切な評価をする必要があるためです。各事業所において、昇給する明確な基準となる人事評価システムを構築する必要があるのです。キャリアパス要件IIIは経験・資格・評価を組み合わせた仕組みでも可能なので、より多角的で総合的な人事評価を行うこともできます。
人事評価をどうやって運用していくか
昇給にとどまらない中長期的な人材マネジメント
新設された加算の利点を大きく活かしていくには、人材評価を適切に行い、出来る限り曖昧さを排除していかなければなりません。公正で公平な人事評価を行うためには、日常の業務の中で明確な基準を設定していく必要があるのです。仮に介護事業を営む経営者側が、昇給をすることで職員の意欲が向上し職員の不満が無くなると考えるなら、認識が不十分と云わざるをえません。
曖昧さを排除して公正・公平な人事評価のために
人材マネジメントは制度を導入すること自体が重要なのではなく、どう組織で機能させていくかがポイントです。そのため、経営者は「人材育成(人事評価)」のみならず、職員の「目標管理」や職員との「コミュニケーション」を職員と共に向上させていく意識を持たなければなりません。
まず経営者自身が、人材の育成や介護職員処遇改善加算に則した人事評価システムの構築・賃金制度の導入・教育制度の充実を図っていく必要があります。
まとめ
介護職員処遇改善加算という制度は、介護職員の雇用を安定させることが目的であることを再認識しましょう。
「介護事業」が賃金が安い業種の代名詞になっており、安定性のある事業の運営とは程遠いということを一番理解しているのは介護事業所で働く職員です。辞められては困るという関係では経営者の思いは職員に届いておらず、また職員の思いも経営者には響いていないのでしょう。雇用の安定は賃金アップのみで図れるものでは無くやりがいのみを押し付けても達成はできないのです。
今後介護事業は売り手市場が過熱し職員の奪い合いになるといわれている中で安定性のある事業の運営を求めるのであれば、何でもできるスーパーマンがいつか面接に来てくれることを期待し続けるのではなく、今そこにいる人材をもう一度見つめ直してみることこそがスタートラインになるでしょう。
加算でも助成金のためでもない本来の意味の「人材育成」は今後の介護事業における頭の痛い問題の多くを解決してくれます。人材の「雇用」・「定着」・「育成」を場当たり的な対応ではなく日々の業務の中で自然に質の高いものに成長していく仕組みにしてしまうのです。評価制度の運用を支援するシステムを利用することで運用の負荷を大きく軽減することもできます。
就業規則に経営理念や行動指針を盛り込む事業所が増えています。加算のために作り直すのではなく、同じ思いを持って働く仲間のために作り直してみてはいかがでしょう。職員の声に耳を傾ける時間を取り、介護事業を立ち上げた志を少しずつ浸透させて行くことで変わっていく職場の空気は、利用者から見える最高のサービス向上として結果を出してくれるでしょう。