人事評価制度の運用を始める前に

しっかりした目的を持った人事評価制度の運用

 

評価制度の真の目的は「人材育成」

「やらされている」から「成長している」へ

人事評価制度を導入したきっかけは何でしょうか?「企業の方向性を理解してもらう」「昇給・昇進の査定」「賞与の配分を決める」「モチベーションの向上」等の多くの目的がありますが、何と言っても「人材育成(目標管理)」という思いが強いのではないでしょうか。もちろん何を重視して運用を行うかはそれぞれですが、目的の無い評価制度は企業にとって負担でしかなく従業員に受け入れられることも無いでしょう。

目的を企業全体で共有することが人事評価制度の運用時におけるはじめの一歩ですが、では人材育成は具体的にはどのように行えば良いのでしょうか?また、多くの企業においてすでに運用が行われている「目標管理」制度においても、どのように目標を定めることで「人材育成」につなげることができるのでしょうか?

せっかくの人事評価制度も「やらされている」と従業員が感じているようでは効果が目に見えることもないでしょう。従業員と企業が共に「成長している」という実感を持てるようなフェーズに移すために必要なことを準備しておきましょう。

 

勝手に育つ(できる)と思い込んでませんか?

「できると思った」は無責任な言葉

例えばあなたが有名な居酒屋でおいしいモツ煮込みを食べ、家に帰りその味を奥さんに再現してもらおうとすぐに調理してもらったとしましょう。もし出来上がったモツ煮込みが期待した味と違った場合にどのようなことを伝える(評価をする)ことができるでしょうか?

  • 目的が曖昧だったり主観的(おそらく具材と味付けくらいしか伝えていない)
  • 完成品や見本を示していない(奥さんはその味を知らない、食べたことが無い)
  • 環境が一致していない(食べた仲間や状況が違う)
  • 準備期間が与えられていない(今の冷蔵庫の中身だけで作るしかない)

ここで「ぜんぜん違う!こんな味じゃなかった(もっと美味しかった)」とカッコの中の言葉まで口に出そうものなら壮絶な修羅場が待っていることは想像に難くないと思います。これは何かについて評価を行うためには「大切な前提がある」ということを表しています。

やったことのないことを評価されるという気持ちがわかるでしょうか?期待することは勝手ですが「評価」と「教育」はワンセットです。この前提を無視した評価制度の運用はありえません。もしここで「おいしく作れなかった(C査定)」を突き付けた場合、あなたにも同様の評価「無茶を言う人、良い夫ではない(C査定)」が下されることは間違いありません。

「親は無くとも子は育つ」と言いますが企業における人事評価制度の運用にあたり「人材教育」を無視することはできません。世間の、周囲にいる人のあたたかさ、また個人の努力により成長することはもちろんありますが、それを期待した評価基準の設定は誤りであることを理解して「教育」の確認としての位置づけとして「人事評価制度」の運用を行いましょう。

「ほら、やっぱりできた」は危険信号

上記の例でもし奥さんが完璧なモツ煮込みを作った場合はどうでしょうか?この場合は冷静に状況を分析しなくてはいけません。

前提条件が満たされていないので

  • 事前に準備ができていた(想定内の無茶ぶりだった)
  • 実は得意料理だった(あなたが知らない一面を持っていた)
  • 奇跡が起こった(冷蔵庫の中身と適当な味付けがうまくいった)

上記の何らかの要因が考えられます。

まずは「評価するための前提条件が守られていない」ため被評価者全体の基準にはならないことを理解したうえで「うまくいった場合」の評価を考えます。

通常このような評価を行うことは無いので不要と思われるかも知れませんが、多くの企業で「きちんと教えていないのに評価している」という実情があることと、本来できないはずであることができた場合にどのように評価すべきかという視点から少しだけ掘り下げて考えてみます。

事前に準備ができていた

このような仕事が発生し得るという状況を理解し準備していた場合です。これは「現在の業務の状況や業界の流れなどが良く見えている」という評価になります。また、「仕事を与えるリーダー(上司)の性格を理解している」とも考えることができます。マーケットが求めるものという視点のなかに、カスタマーとしてリーダーを含んでいるという状況として捉えることもでき、チームが必要としていることを察知する能力があると判断することができるでしょう。必要な情報を判断できる情報収集の能力もあると言えます。もちろん事前の準備には「その店のモツ煮込みを食べに行っていた」ということも考えられ、自身で行動することができる主体性を評価することもできます。

すべての面で言えることは「成長意欲」「学習意欲」を感じることができます。それはしっかりとしたキャリア上の目標があるからと受け止めることができます。

実は得意料理だった

まったく業務に関係ない能力が活きたのであれば、人材マネジメントの視点からは評価できない「たまたまできる人材だった」で完結する話です。これが業務の延長上であれば評価しない訳にはいかなくなりますが、この場合は「企業が業務に必要となる能力の有無をそれぞれの人材において把握していなかった」ということが見えてきます。まれに聞く「○○君がパワーポイント(プレゼン作成ソフト)得意で良かったなぁ」という言葉は企業が人材に求めている能力を把握しておらず、採用や育成ポイントについても明確な基準が無いことを意味しています。「当たりの人材」という言葉を業務において使うことがあれば、それは人材マネジメントの視点で見た場合は良くない状況です。

社内の野球チームでピッチャーをやらせてみたら相手チームを完封したという話であれば良いのですが、たまたま得意だったことを評価することは公平性に欠けることを理解し「人材に求めるもの」の基準を周知する必要があるということを受け止めてください。

奇跡が起こった

まぐれはありますが再現性が無い以上評価することはできません。それでも「チャレンジ」が良い経験になることは間違いなく、「それやってみます」という言葉から「成長するチャンス」として理解しているのであれば期待できる人材といえるでしょう。このチャンスはそれぞれの従業員に平等に与えることが求められますが、実際は余裕がある企業でなくては成長のためのチャレンジをさせることは難しいでしょう。ある程度の適性を見極めたうえでの「チャレンジ」はリーダーがチームメンバーに与える成長のための目標設定そのものです。

「それはムリです」という言葉は「目標設定がムリ」なのか「実行するチームや個人が達成できない」のかを見極めなくてはいけません。「できる根拠」がなくてはそれは達成に意味を持たない目標であり、「できない根拠」がなければチャレンジや成長の無い目標ということです。目標設定自体に「達成することによる目的 = 人材の成長」があることを意識するようにしましょう。

それでも「出来て当たり前じゃない」ことを理解する

上記のいずれの場合も「先輩がついて仕事をしているんだから教育はできている(OJT)」という前提で評価制度が運用されているのが実情です。しかし先輩が評価項目を理解していなければ「何をしっかりと伝えなくてはいけないか」が不明であり、相性によっては理解が十分にならないままと次のステージに移るということもあり得ます。

だからこそ「達成度の確認(評価)」が必要なのです。評価は評点によるランク付けというイメージがありますが「人材育成」を目的とした場合は達成度の振り返りであり成長の確認です。もし教えられていないことを評価される状況があれば、OJTについた先輩の新人育成における評価が「できていない」となります。

 

まとめ

すべては正確な状況把握から

さて、今回の例で「奥さんが完璧なモツ煮込みを作った」場合、結局その正確な理由はわかるでしょうか?
上記の「準備ができていた」「実は得意だった」「奇跡が起こった」以外の理由もあるかも知れません。もし「奇跡が起こった」場合であっても、本人がその理由を正しく伝えないかも知れず、評価基準がしっかりしていない行動の結果については評価することが難しいのです。テストの答案用紙を事前に手に入れることのできた人材を点数のみで正確に評価することはできないように、評価するための準備と正しい状況判断ができなくて期待する「人材育成」の結果を得ることはできないのです。

そのためには評価時のみに人材を見るのではなく、常にリーダー(評価者)はそれぞれのメンバー(被評価者)と円滑なコミュニケーションを通して状況を把握していなくてはいけません。その意味では人事評価制度運用のカギはリーダーの日々の振る舞いと言えるのではないでしょうか。信頼できる人からの評価でなくては「成長」にもつながることはありません。

もちろん「完璧なモツ煮込み」を望むのであれば必要な前提条件を満たしたうえで一緒に作り上げる意識を持ちましょう。

人を成長させる言葉

評価制度の目的が「人材育成」であるとハッキリ言えるのであれば、「褒める」ことで人材を成長させることを意識してください。未達の部分を補うこともしっかり伝えなくてはいけませんが、あなたは評価者であるとともに被評価者と一緒に企業を成長させるという同じ目的を持った仲間なのです。被評価者に求めていることをしっかり伝えることで成長の道筋を指し示し、同じ立ち位置から目的に向かって一緒に向かうことを伝えることでチームワークも良くなります。

人材を見るときは車を買うようなカタログを見る感覚ではいけません。車は高額な商品であり粗探しも必要ですが人材は期待と成長を含んだ目で見る必要があるのです。「ここがダメ、ここが良くない」ではなく、一緒に目的に向かう仲間として「結果」という価値あるものを評価し、その「過程」である取り組みや姿勢もしっかり評価しましょう。時には叱ることも必要ですがその日の気分で叱ることなく明確な基準を持つことで良い緊張感が生まれます。合わせて「どうするべきだったのかを一緒に考える」ことを忘れてはいけません。また、信頼関係が構築できていない段階でダメな部分を指摘すると「嫌なリーダー」というレッテルが貼られることがありますので、良い面を褒めるところから信頼関係を築くのが良いでしょう。

人事評価制度を運用するための環境は整ってますか?

人事評価制度の目的を「人材育成」と捉えた場合に、大前提として「教育」することを放棄しては成立しないことを理解してください。従業員が「教えられていないことをできないと責められた」と感じた場合、働く意欲が失われてしまいます。そして意欲が無くなった時に「目標に向かうエネルギー」が枯渇してしまうのです。

「明確な基準」を準備して「学習」し、その「達成度」を確認しながら「次の階段をのぼる」というのはとてもシンプルな人材育成の手段ではないでしょうか?シンプルゆえに効果があり、そしてその準備に不備があると思った効果が表れないのです。

せっかく始めた人事評価制度です。少し見直すことで大きな企業成長が見込めるのですから「評価基準」「目標設定」について再構築する時間を持つことをお勧めします。その効果は驚くほど早く目に見える結果として返ってくるでしょう。

※「人事評価制度の構築」「キャリアパスの作成」ついてもお問い合わせください

 

人材マネジメントシステム「ホルン」について

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